連載:青山裕企『ニッポンの、ソラリーマン。』第1回 of PIE International / PIE BOOKS


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2012-02-01

第1回 親父の七回忌。名古屋にて。

こんにちは。写真家の青山裕企(あおやまゆうき)です。
2009年11月に、僕のはじめての本『ソラリーマン 働くって何なんだ?!』を刊行してから、二年三ヶ月の時が経ちました。
おかげさまで、この度重版が決まり、もうすぐ全国の書店にて、再び『ソラリーマン』が跳び立ちます。

僕は、今からちょうど六年前の今日(2006.02.03)、サラリーマンの親父を亡くしたことをきっかけとして、
『ソラリーマン』を撮影するようになりました。
先週末に実家の名古屋に帰ったのですが、親父の七回忌があり、会社でとても仲の良かった人たちが、
会いに来てくれました。

なかでも、特に生前深い親交のあった中山さんに、親父の墓の近くで跳んでもらったのが、この写真です。

NS_001_1.jpg

コミカルな跳び方が、実に中山さんらしいなあと、つい笑ってしまう写真です。
きっと親父も、「またアイツ馬鹿やってんな」と思ってるんじゃないかなー。

僕は、サラリーマンに、なれなかった。
だから、憧れを抱いています。
僕にとってのサラリーマンは、まるでヒーローみたいな存在です。

僕の親父は、典型的なサラリーマンでした。
車の販売の営業をしていて、38年間、同じ会社一筋。店長にまでなりました。
実際どんな風に働いていたかは、子供の頃の僕にはよく分からず、
普段見る親父は、休みの日に家でゴロゴロしているという、だらしのない姿でした。
カッコよさからは程遠い存在でしたが、とても優しく寛容で、僕は親父のことが大好きでした。

そんな親父は、三年前に病気で亡くなったのですが、
告別式の時に、会社の人たちが次々と僕に、「サラリーマンとしての親父が、いかにカッコよく偉大であったか」を、
伝えてくれました。
彼らの話を聞いて、僕は正直なところ、とても驚きました。
家でのだらしのない姿と、外でのカッコよかった(らしい)姿のギャップに、です。

家族を守るために、家では一見カッコわるく見えても、スーツに着替えて外に出た瞬間に、
カッコいいサラリーマンに変身する。
そんな親父の姿を想像しながら、僕は“ソラリーマン”を撮りはじめました。

もともと僕は、身のまわりの人たちを跳ばせて撮っていたのですが、
親父が亡くなってからは、主にサラリーマンの人たちを、跳ばせて撮影しています。
恥ずかしがりながらも、頑張ってジャンプしてくれるサラリーマンたちは、
時にコミカルに、時にクールに、とても個性的に見えました。

どこにでも居そうな普通のサラリーマンが、まるでヒーローのように、変身する。
まさに、僕が親父に対して感じた、家と外でのギャップと重なったのです。

“ソラリーマン”は、もちろんモデルでもなければ運動選手でもないので、どこか不恰好だったりします。
ひょっとすると、ヒーローからは程遠く見えるかもしれません。
だけど、彼らの必死なジャンプ姿を見ていると、僕は果てしないエネルギーを感じます。
何だかワクワクしてきて、元気を分けてもらえる気がします
(実際、撮影現場での僕は、とてもテンションがあがります)。

跳ぶ瞬間に、オフ(家)からオン(外)に切り替わるように、“サラリーマン”は“ソラリーマン”になるのだと思います。
そして、まわりの世界を明るくしてくれる存在・・・何だか、ヒーローっぽいと思いませんか?

電車の中で、朝からうたた寝しているサラリーマン。
会社の歯車だなんだと、揶揄されるサラリーマン。
スーツ&ネクタイという外見から、どこか没個性的に見える彼らが、たしかに社会を支えています。

当たり前のことですが、誰一人として、同じサラリーマンはいません。
いろんな色や形の歯車があって、自分たちの意志と力で持って、会社という大きな歯車を、回しているのです。
そんな、大きな仕事が出来るサラリーマンに、僕はやっぱり憧れます。
彼らの放つ個性の輝きを、撮影する度に強く感じながら、心底羨ましいと思っています。
負けないようにしっかりと、サラリーマンの輝く姿を、伝えていきたいと思っています。

僕の親父は、家ではだらしなかったけれど、実はカッコいい“ソラリーマン”だったのかもしれない。
実は、生前に親父のジャンプ姿を撮影していなかったことが、僕にとっての唯一の心残りです。

“ソラリーマン”を撮り続けることで、僕は親父のカッコよかった姿を追い求めているのかもしれません。
サラリーマンのカッコよさを伝えることで、天国にいる親父も喜んでくれてるといいなぁ、と思います。

僕は、サラリーマンに、なれなかった。
だから、ソラリーマンを、僕は撮りつづけよう。


以上、写真文集『ソラリーマン 働くって何なんだ?!』のプロローグ(という名のあとがき)です。
いまも全く気持ちは変わらないことを、僕は改めて認識しました。

この気持ちを胸に、僕は『ニッポンのソラリーマン』を跳ばせる旅に出ようと思います。
“ ソラリーマンが、ニッポンを、元気にする! ”

>第2回

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青山裕企 AOYAMA,Yuki
http://yukiao.jp

1978年愛知県名古屋市生まれ。2005年筑波大学人間学類心理学専攻卒業。2007年キヤノン写真新世紀優秀賞(南條史生選)受賞。
著書に『思春期』(ピエ・ブックス)、『BODY PARTS 上半身編』『ふたり』(以上、パイ インターナショナル)、
『スクールガール・コンプレックス』(イースト・プレス)、『絶対領域』『スク水』(以上、一迅社)、『吉高由里子 UWAKI』(マガジンハウス)、
『つきあいたい』(扶桑社)、『君に、ひとめぼれ。』(海王社)、『透明人間⇆再出発』(ミシマ社)など。
サラリーマンや女子高生など“日本社会における記号的な存在”をモチーフにしながら、自分自身の思春期観や父親像などを反映させた作品を制作している。

跳びあがれ、ニッポン。『日本全国ソラリーマンの旅』を開催します。
全国のサラリーマンの皆様、ジャンプして日本を元気にしましょう!ご応募お待ちしています。
主催:ユカイハンズ